独断と偏見によるバンド計算関係論文ベスト10

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(注意)下記リストの番号は単に区別のためで、順位を表し ているわけはありません。
[1]R. Car and M. Parrinello, Phys. Rev. Lett., 55, 2471(1985)

バンド屋さんだったら(おそらく)誰でも知っている、カー・パリネロ法に関しての最初の論文。詳 しく勉強する場合は、他の解説記事や書籍も読むことを勧めます。

(カー・パリネロ関連解説論文)
(1)小口多美夫、佐々木秦造、固体物理25、No.11, 857(1990)
(2)K. D. Brommer, B. E. Larson, M. Needels and J. D. Joannopoulos, Computer in Physiscs, MAY/JUNE, 350(1993)
[2]G. B. Bachelet, D. R. Hamann and M. Schluter, Phys. Rev. B26, 4199(1982)

(関連論文1)
(1)D. R. Hamann, M. Schluter and C. Chiang, Phys. Rev. Lett., 43, 1494(1979)
(2)L. Kleinman and D. M. Bylander, Phys. Rev. Lett., 48, 1425(1982)

ノルム保存擬ポテンシャルのバイブル的 な論文(一番最初の論文としては関連論文のD. R. Hamann, M. Schluter and C. Chiangのものがあります)です。筆者はこの論文をもとに、D1の時BH S型の擬ポテンシャル作成プログラムを作りました。
原子の電子構造を計算するプログラムさえあれば、このBHSの論文を元に して、ノルム保存型擬ポテンシャルのためのプログラムを作るのは、そう難し いこではないと思います。この論文ではノルム保存擬ポテンシャルの概念と作 り方に関して、非常に詳しく、丁寧に書いてあります。
筆者の経験では、大抵の場合、良い論文という(そして価値のある)ものは、 不思議と英語が平易で、内容が分かり易いものが多いです。

尚、関連論文(2)は、擬ポテンシャルの非局所部分の分離形を利用するこ とによって、実際のバンド計算における速度を飛躍的に向上させる方法につい ての論文です。---> 関連キーワード:ゴーストバンド

(関連論文2)
(1)A. M. Rappe, K. M. Rabe, E. Kaxiras and J. D. Joannopoulos, Phys. Rev. B41, 1227(1990)
(2)N. Troullier and J. L. Martins, Solid State Commun., 74, 613(1990)
;and Phys. Rev. B43, 1993(1991)
(3)X. Gonze, R. Stumpf and M. Scheffler, Phys. Rev. B44, 8503(1991)
(4)D. D. Koeling and B. N. Harmon, J. Phys. C10, 3107(1977)

その後、ノルム保存型擬ポテンシャルは、関連論文2の(1)、(2)のよ うなより少ない平面波数で計算できる最適化型のものが出てきました。
また、(3)は非局所部分の分離形に対するゴーストバンドの問題について 詳しく言及したしたものです。(4)は相対論的における原子の電子状態の計 算の行ない方を説明した論文で、BHS型擬ポテンシャル作成プログラム作成 時には大変役に立ちました。
[3]D. Vanderbilt, Phys. Rev. B41, 7892(1990)

ノルム保存条件を満たさないタイプの擬ポテンシャル、このため(コア近傍 の擬波動関数がより滑らかになるから)平面波の数を、先の最適化擬ポテンシャ ルの場合より更に少なくできます。
[4]V. L. Moruzzi, J. F. Janak and A. R. Williams, 'Calculated Electronic Properties of Metals'(Pergamon, New York 1978)

all-electron法(確かKKR法)を使って、水素からInまでの金属のバンド 構造及び計算結果集のような本です。擬ポテンシャルデータベース作成時には 大変役立ちました。それ以外にも有用な本だと思います。
これは本で、論文ではないのですが、敢えて載せたいと思います。

(関連本)
(1)V. L. Moruzzi and C. B. Sommers, 'Calculated Electronic Properties of Ordered Alloys:A Handbook(The Elements and their 3d/3d and 4d/4d alloys)', World Scientific
Moruzzi先生による続編です。
[5]O. H. Nielsen and R. M. Martin, Phys. Rev. B32, 3792(1985)

ストレス(pngファイル、30KB、非局所擬 ポテンシャル部分の表式例)の計算に関しての重要な論文。筆者はこの論文か ら自プログラムへのストレス計算部分の拡張を行なうことができました。但し、 この論文内のストレスの表式には誤りの箇所があります。ストレス導入のため、 この論文を参考にする場合は、論文内の式もちゃんとフォローしましょう。

(関連論文)
(1)O. H. Nielsen and R. M. Martin, Phys. Rev. B32, 3780(1985)

実は、ニールセン、マーチンの論文は2つの論文が連続して掲載されていま す。初めの方(関連論文の方)は、ストレスのより概念的な話し(筆者にとっ ては難しいです^^;)で、後の論文で、実践的な話し(ストレスの逆空間での 表式やSiバルクなどのテスト計算)となっています。
[6]P. Hohenberg and W. Kohn, Phys. Rev. 136, B864(1964)
W. Kohn and L. J. Sham, Phys. Rev. 140, A1133(1965)
E. Wigner, Phys. Rev. 46, 1002(1934)

これもバンド屋さんなら誰でも知っている論文です。Kohn先生は1998年 度のノーベル化学賞を受賞しました。何故Wignerの論文も挙げてあるかという と、筆者がバンド計算で普通使用する局所密度近似での交換相関ポテンシャル はWigner形式によるものだからです。最も古いものですが、多くの場合で非常 に妥当な計算結果を与えます。
[7]M. T. Yin and M. L. Cohen, Phys. Rev. B26, 3259(1982)

原子間に働く力に関しての詳しい解説と(逆空間での)表式があります。こ の表式も、実はちょっとした間違いがあります。各自でフォローしましょう。
(バンド計算プログラムを作る、或は力の計算を導入することが課題となって いる学生諸君は、安易に質問〔特に筆者に〕しないで、ちゃんと自分でフォロー しましょう。)
尚、関連論文として、ヘルマン・ファインマン(HF)力関係の論文を挙げ ておきます。

(関連論文)
(1)H. Hellmann, Einfuhrung in die Quanten Theorie. (Deuticke, Leipzig), 1937
(2)R. P. Feynman, Phys. Rev. 56, 340(1939)
(3)J. C. Slater, J. Chem. Phys., 57, 2389(1972)


[8]J. Ihm, A. Zunger and M. L. Cohen, J. Phys. C, 12, 4409(1979)

擬ポテンシャルを使った、バンド計算に関しての詳しい解説と、その表式が 載っています。実は、[7]より表式の流れに関しては、詳しいHF力の記述が あります。擬ポテンシャルを扱うバンド屋さんには必見の論文と言えます。
[9]J. C. Slater, Phys. Rev. 51, 846(1937)
O. K. Andersen, Phys. Rev. B12, 3060(1975)
J. Korringa, Physica 13, 392(1947)
W. Kohn and N. Rostoker, Phys. Rev. 94, 1111(1954)
P. Soven, Phys. Rev. 156, 809(1967)

過去、有名なバンド計算法に関してのオリジナル論文、上から順にAPW法、 LAPW法(とLMTO法)、KKR法(これはKorringaとKohn,Rostokerの 2つの論文)、CPA法(コヒーレントポテンシャル近似法、ランダム合金に 対応できるバンド計算手法の一つ、ちょっと違和感がありますが、筆者が一番 最初に接したバンド計算方法なので挙げました。)
[10]T. L. Loucks, 'Augmented Plane Wave Method'(Benjamin/Cummings, 1967)
H. Skriver, 'The LMTO method'(Springer-Verlag, 1984)

これらも論文ではなくて本です。Loucksは有名なAPW法に関しての解説本 で、SkriverはLMTO法の解説本です。いずれの本にもAPW法、LMTO 法それぞれのソースコードが載せてあります。筆者より古い世代のバンド屋さ んは、これらの本のコードをコンピューター(当時は大型汎用計算機全盛の時 代)に手で打ち込んで勉強したそうです(Loucksの時代にはフロッピーの添付 など到底考えられませんでした)。
(やっぱりベスト10には、日本人はいない。)
取り敢えず、独断と偏見によるバンド計算関係論文(含む本)ベスト10は これで一応完成です。

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