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(Start, 9/12, 2002)(Update, 3/3, 2014)

LiBCとは

2001年初頭青山学院大学の秋光教授のグループが発見した、転移温度39Kの超伝導物質MgB2(純然たる金属物質としてはNb3Ge〔転移温度23K〕以来の更新)[1]に関連して、最近注目されている物質。W. E. Pickett先生等のグループが、Liを抜くことにより(LiBCは半導体)、σバンドにホールを作る(hole-doped)と、90 K以上の転移温度示すと理論予測している[2]。

[1] J. Nagamatsu, N. Nakagawa, T. Muranaka, Y. Zenitani and J. Akimitsu: Nature 410 (2001) 63.
[2] H. Rosner, A. Kitaigorodsky and W. E. Pickett, Phys. Rev. Lett., Vol. 88, No. 12 (2002) 127001.

LiBCは、六方晶構造(対称性は、P63/mmc ← hcpと同じ)の物質で、実際に存在する[3]。B-C層とLi層がA-Bスタッキングした構造となっている。この構造での電子状態は、半導体である。バンドギャップは、DFT-LDA計算で約1〜1.5 eVである(勿論、この値は実験値より過小評価となっている)。スタッキングをA-Aにすると電子状態(バンド構造)は、半金属的となる。

[3] M. Wörle, R. Nesper, G. Mair, M. Schwarz and H. G. von Schnering: Z. Anorg. Allg. Chem. 621 (1995) 1153.

筆者(小林)等の研究

筆者等は、LiBCに様々な圧力条件(静水圧、c軸圧縮、a,b軸圧縮)下での構造最適化とその電子状態の計算(当初は超伝導の探索だった)を行なう過程で、a,b軸圧縮下において、LiBCのc軸が縮むことを発見した[4][5]。一般的に、a,b軸圧縮(c軸は自由:ゼロ圧力)では、c軸は伸びるはずであるが、50 GPaのa,b軸圧縮で、約0.014Å縮むことが判っている。これは、c軸圧縮に伴う、c軸とa軸との歪みの比(ポアソン比)が負になることと対応付けることができる(負のポアソン比を示す物質も大変少なく、その中でもクリストバライト〔SiO2多形の一つ〕は最も有名)。その後、仮想物質であるHBCでも同様の格子異常が存在することが判明している[7]。
理論上の縮みとしては大変小さいもので、実験的な観測が可能かには議論が必要であるが、計算の上では、考え得る様々な誤差の可能性(エネルギーカットオフ、k点数、k点の取り方、LDAの型、計算方法〔擬ポテンシャル手法、全電子手法)の違い等)を排除した結果としての結論である(但し、これはあくまで理論上の話で、実際にこの物質が本当に〔a,b圧縮下でのc軸が〕縮むかを保証するものではない)。
更に筆者等は、c軸方向の圧縮により、a,b軸が縮む仮想的な物質、h-MgB(h-BN型構造)を見い出した[8][9]。h-MgBは、hexagonal-BN(六方晶窒化ホウ素)と同じ結晶構造で、マグネシウム(Mg)が窒素と置き代わった構造となっている。仮想物質HBCは、a,b軸圧縮における格子変化の異常の他に、c軸圧縮においても格子異常を示す[9]。但し、HBCにおけるc軸圧縮での格子異常は、Pz = 20 GPaにおいてごく僅かにa,b軸が縮む(0.001Åのオーダー)。Pz = 50 GPaではa.b軸は伸び、格子異常は見られない。Pz = 20 GPaの場合、k点数、平面波数を増やして検証を行なったが、格子異常は依然として見い出されることが分かっている。
C6B2は、グラファイトに類似する仮想構造の物質で、MgB2ともそのバンド構造や内部原子の変位に対する全エネルギーの変化における非線形性等が類似し超伝導を示す可能性がある[10]。副次的にこの仮想物質は、a,b軸方向に圧縮すると、LiBCの場合と同様にc軸の格子定数が縮むことが判明した。特に縮みはLiBCなどの場合よりずっと大きく、c軸の格子定数の約1%に達する。一方、先に述べたようにC6B2は、グラファイト様層状物質でc軸方向の面間距離は長く(グラファイトより若干長め)、その面間結合は非常に弱いと考えられる(←ファンデルワールス力)。このため、GGA(一般化された密度勾配近似)による計算ではc軸の格子定数を求めることが出来なかった(←全エネルギー最小値が得られない)。LDA(局所密度近似)ではc軸方向に対する全エネルギー最小値が存在し、妥当な格子定数が得られるが、c軸方向の格子定数の精度は十分に正しく得られているとは言い難い部分がある。

[4] K. Kobayashi and M. Arai, "LiBC and related compounds under high pressure", Physica C 388 - 389 (2003) 201 - 202 (LT23).
[5] K. Kobayashi and M. Arai, "Lattice Anomaly of LiBC and Related Compounds under Anisotropic Compression", Journal of the Physical Society of Japan, Vol. 72, No. 2 (2003) 217.
[6] K. Kobayashi, M. Arai and K. Yamamoto, "Electronic and lattice properties of MgB2 and related phases under various compression conditions", Journal of the Physical Society of Japan, Vol. 72, No. 11 (2003) 2886(関連論文).
[7] K. Kobayashi, M. Arai and T. Sasaki, "Lattice Anomalies of MBC (M = H, Li, Na) Under Anisotropic Compression", Trans. MRS-J, Vol. 29, No. 8, 3799-3802 (2004)[IUMRS-ICAM2003](関連論文).
[8] K. Kobayashi and M. Arai, "Lattice anomaly of MgB(h-BN) under anisotropic compression", Mater. Trans., Vol. 45, No. 5, (2004) 1465 - 1468.
[9] K. Kobayashi and M. Arai, "Lattice anomaly of MgB(h-BN) and related compounds under various compression conditions", Molecular Simulation, Vol. 30, No. 13 - 15 (2004) 981 - 986 (in Proceedings ICMS-CSW2004).

【C6B2(ISS2004)
[10] K. Kobayashi, Y. Zenitani and J. Akimitsu, "First-Principles Study of C6B2", Physica C, Vol. 426-431, Part 1. (2005) 374 - 380 [ISS2004]. ← その後の計算により、非調和性はMgB2と比べ、ずっと弱いことが判明した(B系、C系超伝導体の第一原理電子状態計算[参照]→www.nims.go.jp/cmsc/へ)。
[11] K. Kobayashi, M. Arai and K. Yamamoto, "First-Principles Study of C6M2 (M = B, Al, Mg, Li), C7B and Related Compounds", Mater. Trans., Vol. 47, No. 11 (2006) 2629 - 2637[AlC2, MgC2, LiC2, LiB2].
[12]K. Kobayashi, M. Arai and K. Yamamoto, "First-principles study of C6B2 and related compounds", in proceedings of IWSDRM2005 (STAM, Vol. 7, Supplement 1 (2006) 71 - 77).

今回の格子異常に関する研究上の意義

  1. 通常は考えられない格子異常を理論的に予測している。
    ↑理論が先行している数少ない例の一つである(と思う)。
  2. 現行の理論計算では、最も精度的に信頼できるものによる結果である。
    ↑どこの第一原理バンド計算を扱う研究室、グループでも、十分な精度を考慮して計算すれば、どの研究室、グループでも今回と同様な結果を与えることに疑いはない(と我々は考えている)。
  3. この格子異常は、ユニットセル内原子の変位を全く伴わないで実現される。c軸伸長(圧縮)で負のポアソン比を示すクリストバライトでは、複雑な原子の回転等、内部原子の変位を伴う(複合構造としてのハニカム構造も同様)。今回のLiBC、HBC、h-MgBではそのようなことが全くない状態で格子異常が実現され、これは非常に特異と言える。

関連物質の計算

HBC[7][9]、MgBC、NaBC、MgC2h-MgB[8][9]、C6B2[10]、LiB2[11]等

(今後の予定)

(過去の発表)
↑日本物理学会2004年秋季大会で発表(終了)(青森、講演番号:15aTB-6)
↑広島で行なわれるLT23で発表(ポスター:終了)(講演番号:23BP36)
↑日本物理学会2002年秋季大会でも同様の発表(終了)(講演番号:8pQC3)
↑物性研短期研究会「物性研究と計算物理学」にて発表(終了)
↑CMSCセミナー、11/20、2002(千現)にて発表(終了)
↑ISAM2003(NIMS、並木、3月12日)にて(ポスター、PS17)講演(終了)
↑日本物理学会第58回年次大会(東北大学、東北学院大学、3月下旬)にて講演(複数:筆者関連発表は、28aZC-1〔領域6〕、31aPS15〔領域11〕、終了)
↑日本物理学会秋季大会(岡山大学、9月下旬)にて講演(20aTK-6、23aPS-7、終了)
↑第16回DV-Xα研究会(千現、8月6日〜8月8日、2003)にてポスター講演(終了)
↑IUMRS-ICAM2003(横浜、10月8日〜10月13日、2003)にてポスター講演(10/10ポスター講演、終了)
↑第6回アジアワークショップ(第一原理計算関連、つくば、11月10日〜11月12日、2003)にてポスター講演(終了)
↑第44回高圧討論会(横浜、11月21日〜11月23日、2003)にてポスター講演(終了、筆者講演は11/22)
↑ICMS-CSW2004(つくば、1月13日〜1月15日、2004)にてポスター講演(関連講演、終了)


バンド計算関連情報

MgB2関連論文(バンド計算関連)[ページ]
(LiBCの理論計算の論文情報


関連有用リンク、参考文献、その他情報等


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